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松山地方裁判所今治支部 事件番号不詳 判決

主文

被告会社が、昭和三十二年七月三十一日臨時株主総会の名において、取締役に被告村上春夫を選任し、同日取締役会の名において、代表取締役に被告村上春夫を選任し、同年十月十八日臨時株主総会の名において、原告の取締役を解任し、被告会社を解散し、且清算人に被告村上春夫を選任したとの各決議は、何れも存在しないことを確認する。

原告のその余の請求を棄却する。

訴訟費用は被告等の負担とする。

事実

原告代理人は、主文記載同旨(外に第二項として右決議に基いて松山地方法務局今治支局に於て為した各登記の抹消を求める)の判決を求め、その請求の原因として、

一、被告ミズホ製薬株式会社(以下単に被告会社と称す)は、医薬品の製造販売並に輸出等を目的として、昭和三十二年五月二十五日資本金三十万円、一株金五百円を以て設立し、発行済株式総数並に発行済額面株式共六百株とした株式会社であり、株主は全部で十名である。

二、而して、原告は、被告会社設立当初から、同会社の六十株の株主となり、取締役に就任したものであるが、後日意外にも、昭和三十二年七月三十一日招集と称する株主総会において、被告村上春夫が取締役に選任せられ、即日取締役会において、代表取締役に選任せられ、之が登記を了し、又同年十月十八日付招集と称する株主総会において、原告が取締役を解任せられ、且被告会社解散の決議がなされ、同時に被告村上が清算人に選任せられたと称し、之が登記を了していることを知つて驚いた。

三、然れども、右各株主総会は、何れも全く開催せられたことがない。被告村上が、独断で株主総会議事録等を偽造作成して、前記各登記手続をなしたものである。即ち昭和三十二年七月三十一日付臨時株主総会議事録、同日付取締役会議事録、同年十月十八日付臨時株主総会議事録の各末尾記載の署名捺印は、被告村上以外の分は、すべて偽造であつて真正なものではない。

尚、被告村上は、被告会社の帳簿に全株主の株式全部を被告村上に譲渡した旨の虚偽の記入をしておるが、之は明らかに被告村上が文書を偽造してなしたものであつて、右譲渡の事実はない。

従つて、被告村上春夫を被告会社の取締役に選任するとの昭和三十二年七月三十一日付株主総会の決議、被告村上を代表取締役に選任するとの同日付取締役会の決議、原告の取締役を解任し、被告会社を解散し、被告村上春夫を清算人に選任するとの同年十月十八日付総会の決議は、何れも不存在である。

四、被告村上は、当初原告が会社事務の単なる事務員として、会社設立関係の事務等を委嘱してやらしていたものに過ぎないのに拘らず、原告が該事務に全く無知であるのを奇貨として、前記の如き策謀をして、自己の利を得んと企てたものである。被告会社は、設立以来全く事業をなしたことなく、従つて設備資産や債権債務等全く存在せず文字通り有名無実のものであるので、清算事務としてなすべきことは全然存在しないにも拘らず、被告村上は前記の如く不法な手段で、自ら清算人の登記をなし、清算事務と称して、原告の所有に係る木工所並に其の内部の機械設備資材や、電話等に対し何ら正当の理由なくして、被告会社に引渡せとの請求をなし、加え昭和三十三年九月十三日暴徒十数名を使用して、右木工所内部の設備機械を強奪するの暴挙を敢行し、目下刑事事件に問われている状況である。

よつて、請求の趣旨の通りの判決を求めたく本訴に及んだと述べた。

立証(省略)

被告村上春夫は、原告の請求を棄却する、訴訟費用は原告の負担とするとの判決を求め答弁として、

原告主張の請求原因事実第一項、第二項は認める。被告は、昭和三十二年六月三十日被告会社の株式全部を代金支払の上譲渡をうけた。第三項は否認する。第四項中、木工所電話引渡の請求をしたこと、木工所の機械器具を搬出して売却し、原告が被告を告訴していることは認めるが、その他は否認すると答え、

被告会社清算人職務代行者は、被告村上春夫の答弁を援用すると答えた。

立証(省略)

理由

被告ミズホ製薬株式会社(以下被告会社と略称する)は、医薬品の製造並に輸出等を目的として、昭和三十二年五月二十五日資本金三十万円、一株金五百円をもつて設立し、発行済株式総数並に発行済額面株式とも六百株とした株式会社であり、株主は全部で十名である。

而して、原告は、被告会社設立の当初から、同会社の六十株の株主となり、取締役に就任したものであるが、被告会社では、昭和三十二年七月三十一日招集の臨時株主総会において、被告村上春夫が取締役に選任され、即日の取締役会において、代表取締役に選任せられ、之が登記を完了し、又同年十月十八日招集の臨時株主総会において、原告が取締役を解任せられ、且被告会社解散の決議がなされ、同時に被告村上が清算人に選任せられ、之が登記が完了していることは、当事者間に争いがない。

株式会社の株主総会は、原則として、取締役会の決議に基き、代表取締役の招集するところであり、その招集手続議事方法にも、厳格な法の定めがある。その法令違反の甚だしい場合は、決議不存在と認めなければならない。

株主総会の決議不存在の場合とは、決議取消又は無効とは異なり、総会そのものが法律上不存在と認むべき場合、例えば、招集権のない者が招集した場合、招集通知をうけた株主数が著しく僅少で、社会観念上殆んどその通知がないのに等しい場合、総会終了後残存株主のみで決議した場合等が之に当り、決議がなかつたのに議事録に決議があつた旨の虚偽の記載をした場合も之と同様であり、総会不存在のときの決議は、当然に且絶対的に無効であり、その無効は何人よりも如何なる時期においても、無効確認を求める利益が存する限りこれを主張し得ると解する。

そこで、成立に争いのない甲第一号証乃至甲第十八号証の一、二、甲第二十九号証乃至甲第三十七号証を綜合して考えると被告会社の株主十名(各六十株の株主)中七名まで、(のこり二名は在東京、一名は病気)被告会社の株主総会等開催の事実のないことを証言しており、被告会社の昭和三十二年七月三十一日招集の臨時株主総会、同日招集の取締役会、昭和三十二年十月十八日招集の臨時株主総会は、何れも開催されたことがなく、また、右総会、取締役会で、主文記載の如き各決議があつた旨の各議事録の記録は、虚偽の記載であることを認めるに十分であり、右臨時株主総会等そのものが不存在であること明らかである。

被告村上春夫は、昭和三十二年七月三十一日招集株主総会決議において、取締役に選任せられ、同日取締役会において、代表取締役に選任せられ、昭和三十二年十月十八日招集株主総会において、原告(取締役)を解任し、昭和三十二年十月二十五日を以て、被告会社を解散し、清算人として被告を選任する旨の決議があつたように各株主総会、取締役会議事録に虚偽の記載をなし、その旨の登記をしたものと認められる。

右認定に反する証拠はない。

原告その余の主張については、判断を省略する。

株主総会、取締役会の決議不存在は、当然且つ絶対の無効であるから、無効確認の一般原則に従い、被告並に被告会社にも主張し得べく、且つ、之を争う被告並に被告会社に対し確認の利益がある。よつて、主文記載の各決議不存在を求める原告の請求は理由がある。なお、各臨時株主総会並に取締役会の決議事項は、無効であるから、決議事項の各登記は、之を抹消すべきものであるが、被告並に被告会社に対し、これが抹消を求むべきではなく、商法第二百五十二条、第二百五十条、非訟事件手続法第百九十五条の四、第百三十六条の六準用により、株主総会等の決議不存在確認判決の確定をまつて、受訴裁判所の嘱託により之をなすべきものと解するから、右登記抹消を求める原告の請求は、理由がないので、これを棄却し、民事訴訟法第八十九条、第九十二条、第九十三条により主文の通り判決する。

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